ID. R
車種紹介

フォルクスワーゲンのEVレーシングカー ID. R − 多数の最速記録を叩き出すマシンの“カギ”は?

日常的な街乗りを想定したタイプではなく、完全なるレーシング仕様の電気自動車も世界にはいくつか存在しています。現在開発途中のものも多数ある中、EVレーシングカーの中でもトップクラスレベルのスペックを持っているのがこのフォルクスワーゲンのID. Rです。

これまでには数々の最速記録も樹立しており、電気自動車としての性能とクルマとしての速さの両立がなされた、トップレベルの1台となっています。

ID. R 開発の原点

2017年10月にプロジェクトが始動し、2018年4月に発表がされたID. R。世界で一番有名とされるマウンテンレース「パイクスピークヒルクライム」に向けた電動レースカーとして開発がスタートしました。

名前にはフォルクスワーゲンの電気自動車ブランドとしてのID.と、パーフォーマンスカーと同義とされるRの文字が組み込まれ、EVレーシングカーとして高い性能を誇るというスピリッツは、名前の中にも組み込まれています。

ID. Rのバッテリー

電気自動車として一番気になるのが、バッテリー部分です。このID. Rでは、一般的なEVでも使用されるリチウムイオンバッテリーを搭載しています。ですが、一般のEVと大きく違う点が、バッテリーの考え方にあります。

コックピット前後に配置されたバッテリーは、航続距離を求めるといった従来のEVの考え方とは異なり、より高い出力が出せるよう工夫がされています。そのため、より軽量で、エネルギー効率的にもできるだけ無駄のない設計が行われているのです。

ID. Rとパイクスピークの環境

実際のパイクスピークのレースでは、スタートエリアに2つの急速充電システムを用意。90kWの比較的低い出力でのエネルギー供給を両方から行います。これは、低い充電電流を用いることで、熱の発生を抑制する働きがあるため。6月でも氷点下より少し高い程度の、かなり低い気温となるパイクスピーク。

バッテリーの理想的な温度は摂氏30度前後とされ、結露が溜まってしまうことを防ぐためにも急速充電中には、極端な冷却環境となることを防ぐべく、様々なバッテリーに対する工夫も必要とされています。

こうしたパイクスピークの環境への工夫や対策も性能と上手く合わさって、2018年6月24日、2013年に樹立された当時の最新記録よりも16秒も速い記録となる、7分57秒148という記録でパイクスピークの最速タイムを打ち出しました。

ID. R の無駄を省く回生ブレーキシステム

出力は500kW。F1カーやフォーミュラEのマシンよりも速いとされる加速性能は、0-100km/hで2.25秒といった数値です。こうした速さの実現と継続を可能とするためにも、また違った工夫も取り込まれています。

多くの電気自動車にも取り入れられている回生ブレーキ。このID. Rにおいても、より効率的な走行が行えるよう、回生ブレーキシステムが搭載されています。ブレーキを使用した際に発生するエネルギーを電力へ変換することができるこのシステムによって、ID. Rはバッテリーの20%を回収することが可能。それにより、バッテリーパックのサイズをよりコンパクトなものとし、軽量化することができるようになりました。そのため、よりクルマとしての重さを減らせ、車重は1,100kg未満といった重さとなっています。

またレーシングカーであるため回生ブレーキは、ドライバーが走行時に違和感を感じるものであってはなりません。そのためにオンボードコンピューターによる調整を行い、より効率的な回収と快適なドライビングの両立を可能としています。

ID. R とニュルへの挑戦

2019年3月には世界的にも有名な、ドイツの歴史あるコース、ニュルブルクリンクで6分5秒336を記録。この記録は完全な電気自動車として、ニュルブルクリンクで最速の記録となり、2017年にNIOのEP9が樹立した当時の最速レコードを40.564秒も速くゴールしました。

関連記事:世界最速電気自動車の記録を持つNIO「EP9」

このニュルでの記録樹立のために、2019年に入ってからはF1で使用されているドラッグリダクションシステム(DRS)も導入。パイクスピークでの過去の走行と比較してもより高速走行が可能な空力設計が施されています。

ID. R がF1マシンの記録を越す

また2019年7月に開催されたグッドウッドフェスティバルにおいて、これまで20年間続いた最速記録を打ち破り、1.86kmのコースを39.90秒でフィニッシュ。これはマクラーレンメルセデスのF1マシンが打ち出したもので、過去のマシンといえども、F1マシンよりも速い記録となっています。

ID. R のChinaチャレンジ

2019年9月には中国・天門山の全長10.906kmに及ぶコースでも最速記録をマーク。7分38秒.585は、最新で最速のタイムとなっています。こうした数々の記録もベースとして、今後も最速EVレーシングカーとして様々な改良や研究が進められることでしょう。どのようなスペックへとアップグレードがされていくのか、非常に楽しみであります。

参考・画像出典元:ID.R | Volkswagen Newsroom(Volkswagen)